東証「脱大蔵」を官邸後押し、民間会長・社長で天下りに一石


 

 東京証券取引所の土田正顕社長の死去に伴うトップ人事は、鶴島琢夫社長(元東証副理事長)、宗国旨英会長(ホンダ会長)と、民間人の二頭体制となることが固まった。官僚天下り排除を狙う首相官邸の意向と、中国・上海やシンガポール市場の急成長に対する危機感が働いた結果だ。東証は官邸と財界の後押しを受けた形で、6代37年間続いた旧大蔵官僚による支配から脱却する。

 ●アジア猛追に危機感

 「民間人の方が証券市場の活性化や現場について、役所出身者よりもよく知っている。民間人に適材がいたら民間人の方がいいという考えのもとに選出されたのだから、いいと思いますよ」

 小泉首相は8日夜、記者団に対し、民間人起用を歓迎した。官邸は表向き、「東証の人事には関与しない」(福田官房長官)と装うが、東証は早い段階から「首相は民間人を望んでいる」との意向を感じていた。

 証券業界筋によると、官邸側と接触した東証関係者は「官邸は思っている以上に資本市場について真剣に考えている。東証の社長人事を当事者意識を持ってみている」という印象を持った。証券界に根強い民間待望論と合致し、「脱官僚」の路線が決まった。

 もっとも、財界人からの社長起用は難航した。そこで、社長、会長の二頭体制を採ったが、「結果的に官僚OBの天下りを排除する工夫にもなった」と業界関係者。「民間の会長を起用することが分かっていれば、官僚OBは社長になることを嫌がる」というわけだ。

 人選を進めたのは東証の指名・報酬委員会。株式会社になって設けられた取締役会の内部委員会だ。5人の委員のうち東証社外取締役の氏家純一・野村ホールディングス会長と安陽太郎・十字屋証券社長、東証の吉野貞雄専務が中心になった。

 東証や財界は中国の経済成長に伴う上海市場の猛追に危機感を抱いていた。日本では長く銀行主導の間接金融が続き、ライバルの出現で直接金融の資本市場強化が切実になっている。

 こうした危機感が反映されたのが会長人事。米国ホンダ社長を80年代後半につとめ、国際派で知られる宗国氏が東証会長に固まった裏には、トヨタ自動車会長の奥田碩・日本経団連会長と米国勤務が長い氏家氏の影響力が垣間見える。

 「氏家氏は東証の社外取締役でもある奥田氏と何度か会い、東証人事を話し合った」というのが、業界関係者の共通した見方だ。

 ●上場へ改革急務

 社長になる鶴島氏の役割は、東証を予定通り05年度中に上場させることだ。東証幹部自ら「コスト意識が低く、官僚的」と認める組織の改革は急務。老朽化したコンピューターシステムを更新する巨額投資と並行して、上場へ向けて相場に左右されにくい経営体質を築く必要がある。

 一方、生え抜きの鶴島氏に対する不安も業界にはある。東証職員で初めて副理事長になり、「社長就任は東証にとって悲願」(大手証券幹部)だったが、「身内への甘さから改革の矛先が鈍るのでは」(業界幹部)との声も漏れる。

(03/10)